能登半島地震の特徴と原因は?最大震度7の揺れと津波
2024年1月1日午後4時10分ごろ、石川県能登半島で最大震度7の揺れを観測する大地震が発生しました。建物の倒壊や津波の被害などで死者は240人以上に(災害関連死含む)。地盤の隆起も確認されています。なぜ起きたのか。どんな地震だったのか。特徴や影響は。分かってきたことをまとめました。
2024年の能登半島地震関連ニュースで紹介
目次
石川県で初の震度7
地震の発生は2024年1月1日午後4時10分ごろ。震源は石川県能登地方で深さは16キロ、地震の規模を示すマグニチュードは7.6でした。阪神・淡路大震災を起こした地震や熊本地震のマグニチュードは7.3だったので、それよりも大きな規模です。
この地震で震度7の非常に激しい揺れを石川県志賀町で観測したほか、震度6強を七尾市や珠洲市、穴水町で、震度6弱を中能登町と能登町、新潟県長岡市で観測しました。さらに、当時は震度の情報が入電されていなかった震度計のデータを気象庁が分析した結果、輪島市でも震度7の揺れを観測していることが分かりました。
気象庁によりますと、石川県で震度7を観測するのは観測史上初めてだということです。
気象庁は、今回の一連の地震活動を「令和6年能登半島地震」と名付けました。その後も地震が相次ぎ(下の図の●は地震を示す)震度1以上を観測する地震は1月1日の地震発生から1か月で1500回を超えました。
「揺れ」 “阪神・淡路大震災の地震に匹敵”
地震波形を分析した結果、木造家屋に大きなダメージを与える周期1~2秒の揺れが強かったことがわかっています。専門家は“阪神・淡路大震災を引き起こした地震に匹敵する”としています。
⇒M7.6の地震の2分後にM5.7の別の地震発生 気象庁⇒阪神・淡路大震災に匹敵 建物に大きく影響の周期1~2秒の揺れ
⇒震度7観測の石川県志賀町 揺れは東日本大震災に匹敵 気象庁
「建物被害・火災」 相次ぐ揺れで耐震性低下か
最大震度7の揺れで多くの建物に倒壊するなどの被害が出ました。ビルも倒壊したほか、断水して津波の危険がある中で消火が遅れ、輪島市などでは大規模な火災も発生。
専門家の調査で、火災の発生率は東日本大震災を上回っていたことが分かりました。
また、大きな被害が出た輪島市と珠洲市の中心部について、AIを使って建物の被害を推定したところ、少なくとも3割が全壊したとみられることがわかりました。
多くの建物が倒壊したことについて専門家は、2020年ごろから能登地方で続いている活発な地震活動の影響で、地震に耐えられる力が低下していたなどと指摘しています。
⇒輪島の大規模火災 電気系統ショートなどで出火か⇒比較的古い木造建物で甚大な被害 国交省現地調査
⇒AIで推定 輪島と珠洲 中心部の建物被害 “少なくとも3割全壊”
⇒火災発生率 東日本大震災を上回る 専門家が報告
⇒災害廃棄物 石川 珠洲で65年分相当量
⇒珠洲や輪島は耐震基準満たした建物は倒壊免れる揺れか
⇒輪島市の大規模火災 焼失面積は5万800平方メートル 国交省
⇒揺れ周期の違いが建物の被害割合に影響か
⇒輪島 倒壊ビル “地下やくいに何らかの損傷か”
⇒輪島の火災 “大津波警報で初期消火できず拡大か”
⇒2020年ごろから続く地震で建物の耐力低下か
「断層の動き」 “150キロの活断層ずれ動いたか”
今回の地震では、北東から南西にのびるおよそ150キロの活断層がずれ動いたと指摘されています。1995年に阪神・淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震の活断層が50キロほどと言われていて、長さだけを見るとその3倍にも及びます。
さらに、震源域の断層の動きを専門家が分析した結果、能登半島の北東にある断層がほとんどずれ動いていなかったことが分かりました(下の図の「薄い黄」「白」の四角で示すエリア)。専門家はこの断層で規模の大きな地震が発生すると新潟県の沿岸に津波が押し寄せるおそれもあるとして注意を呼びかけています。
また能登半島地震の震源域付近の海底に地震でできたとみられる段差が2つあるのを、東京大学などの研究チームが発見しました。このうちの1つについて研究チームは海底の活断層の可能性があるとしています。
⇒地震でできた段差か 震源域海底に2か所 東京大学など⇒北東側でも活断層ずれ動いたか 地震調査委
⇒“北西海域の活断層ずれ動いた可能性”地震調査委
⇒志賀町で大地震引き起こした活断層とは異なる断層確認
⇒能登半島の北東断層ずれ動かず “注意を”
⇒少なくとも2回の大きな断層破壊が起きたか
⇒能登半島地震 およそ150キロの活断層がずれ動いて起きた可能性
⇒能登半島地震 “3つの異なる断層ずれ動いたか” 専門家
「津波」 珠洲市や能登町で4m超に達したか
各地で “津波”も観測され、家屋流失などの被害も起きています。
専門家の分析では、地震の直後に津波が発生し、珠洲市には約1分以内、七尾市には約2分以内、富山市には約5分以内で沿岸に到達していたとみられることがわかりました。
津波の痕跡から能登町の白丸で高さ4.7メートル、珠洲市飯田港で高さ4.3メートルに達していたとみられるほか、新潟県上越市の船見公園では高さ5.8メートルの階段に津波が運んできた漂流物が残されていました。
また「海底地すべり」が発生し、津波が起きた可能性も指摘されています。
富山湾の海底で斜面の一部が深さ40メートルにわたって崩壊していたことが海上保安庁の調査でわかり、専門家は「海底で地すべりが起きて津波が押し寄せたことを裏付ける重要な調査結果だ」と指摘しています。能登半島地震の震源から離れた富山市におよそ3分で津波が到達した要因を解明する手がかりにもなると注目されます。
⇒津波長引いた際 いつまで続くか見通しを示す案を議論⇒富山 高岡の海岸で高さ約1.8mの津波到達か
⇒新潟 上越 能登半島地震 津波が高さ最大5.8mまで到達か
⇒富山湾の海底 斜面の一部 深さ40mにわたり崩壊 海保の調査
⇒発生3分で富山市に津波 「海底地すべり」か
⇒新潟 上越 関川河口付近の津波 局地的に遡上高6m余に達したか
⇒珠洲市沿岸 津波は地震から1分以内に到達か 専門家分析
⇒石川県 志賀町で津波4m超遡上か
「地盤変動」 能登半島の陸域広がる 4メートルの隆起確認
また、能登半島の北岸の広い範囲で地盤の“隆起”が確認されています。
能登半島では陸域がおよそ4.4平方キロメートル拡大し、輪島市では最大で240メートル、珠洲市では最大で175メートル、海岸線が海側に向かって広がったことが専門家の調査で明らかになりました。海水がほとんどなくなってしまった港湾も複数あるということです。
さらに輪島市では、防潮堤や海沿いの岩礁がおよそ4メートル隆起したことが専門家調査で明らかに。能登半島の北側では過去に大規模な地震が繰り返してできたとみられる階段状の地形があることから、専門家は「4メートルもの隆起はめったにないことで数千年に1回の現象だ」と指摘しています。
また、珠洲市では全長およそ4キロにわたって地盤が隆起し、一部では高さ2メートル余りの「崖」ができていたことが国土地理院の調査で分かりました。
⇒珠洲 地盤隆起は全長約4キロ 高さ2メートル余の「崖」も⇒能登半島の北西の沖合 大地震後に海底が3m隆起
⇒能登半島北側の海岸でも2m超の地盤隆起
⇒広範囲隆起 映像分析した専門家「驚きの結果」
⇒"数千年に1回の現象"防潮堤や海沿い岩礁約4m隆起
⇒能登半島 4.4平方km拡大 輪島市の海岸線 海側に最大240m広がる
⇒能登半島地震 珠洲市の海岸線 最大175m拡大 広島大学などの調査で判明 地盤隆起で
⇒輪島市西部 M7.6の地震で最大約3mの地殻変動 国土地理院
「土砂災害」“警戒区域”で被害相次ぐ 盛土の崩落も
「土砂災害」による被害も相次いでいます。
専門家が調査した結果、能登半島地震で土砂災害の被害を受けた建物は、少なくとも34か所にのぼり、8割以上が土砂災害警戒区域内だったことが分かりました。専門家は自分のいる場所が警戒区域か確認してほしいと呼びかけています。
「盛り土」の崩壊も相次いでいます。石川県七尾市や津幡町では土を盛って造成した土地が崩壊し、住宅にも被害が出ていたことが分かりました。調査した専門家は「改めて盛り土の安全性を確認していく必要がある」としています。
⇒盛土で造成した土地 複数地点で崩壊し住宅被害も⇒輪島の土砂災害「流れ盤」が地震の揺れで崩壊か
⇒能登半島地震 土砂災害の被害分析 “危険エリア”で被害相次ぐ
「液状化・河道閉塞」
液状化現象による被害や、斜面の崩落による“河道閉塞”も確認されています。液状化の住宅被害は石川・富山・新潟の3県で1万件を超えるとみられます。
内灘町では、液状化現象が発生してビルが地面にめり込み、近くでは地割れが数本確認されたほか、地面が水平方向にずれ動いたとみられるということです。一部の地域では地盤の液状化をきっかけに土が低い土地に流れ込む現象が起きていたことも分かりました。その後の専門家の調査では、水平距離にして12メートルほどもずれ動いていた住宅が確認されています。地盤が横方向に大きくずれ動く「側方流動」が起きたとしています。
また専門家が分析した結果、液状化現象による被害は、風によって運ばれた砂からなる「砂丘」でも発生し、特に被害が大きかった場所が日本海に面した側ではなく、陸側に集中していたこともわかりました。
⇒液状化で住宅が12mほどずれ動く“広域的な対策を”⇒液状化被害 石川 富山 新潟 3県で1万件超か
⇒液状化の被害は「砂丘」に集中
⇒内灘町 液状化きっかけに低い土地に土が流れ込んだか
⇒能登半島を流れる6つの川の計14か所で河道閉塞
⇒新潟 砂丘付近と旧河道で液状化被害集中か 専門家が指摘
⇒石川で液状化現象 1m以上の段差も
⇒輪島市で土砂が川ふさぐ“河道閉塞”複数箇所で
⇒住宅地斜面崩壊 液状化現象が原因か
⇒能登半島地震 広範囲で液状化現象 長い揺れと砂地地盤が要因か
「地震の原因」 “地下に流体流れ込んだことが原因の一つ”
能登半島では、2020年から地震活動が活発になっていて、地下に“流体”が流れ込んだことが原因の一つだと指摘されていました。
分析を続けてきた京都大学防災研究所の西村卓也教授は、この“流体”による地震活動が今回の大地震の引き金となった可能性があるとしたうえで、今後、さらに広い範囲の地震活動に影響を及ぼさないか注意が必要だとしています。
⇒能登半島地震“地下に流体流れ込んだことが原因の一つ”専門家「今後の地震活動」
能登半島地震の発生から時間がたつ中、地震の回数は当初に比べて少なくなっているものの、政府の地震調査委員会は、今後も強い揺れや津波を伴う地震が起きる可能性があるとして、引き続き注意を呼びかけています。
さらに専門家は、能登半島地震の震源域から離れた金沢市や富山湾でも地震活動が活発になっているとして、広い範囲で地震の揺れや津波に注意が必要だと呼びかけています。
⇒今後も強い揺れや津波伴う地震に注意を⇒震源域から離れた金沢などでも地震活動活発に
「活断層のリスク評価」
国は毎年、社会的に影響が大きい「主要活断層」のリスクを評価していて、切迫度が最も高い「Sランク」は全国で31にのぼります。ただ、この中に能登半島地震に関係があるとみられる活断層は含まれていません。
一方、「主要活断層」とはされていないものの、今回ずれ動いたとみられる活断層を含め多くの活断層が日本海の海底に存在することが過去の調査でわかっています。
専門家は、これまでの活断層のリスク評価は主に陸域が対象で「海岸沿いの活断層は盲点になっている」として、今回の地震を教訓に海域の活断層の調査手法などの見直しが必要だとしています。
また、能登半島地震を受けて、政府の地震調査委員会は能登半島を含む海域の活断層について専門家による活動評価の結果がまとまり次第、2024年度中に順次公表する方針を示しました。
⇒地震予知連「より具体的に情報発信を」能登半島地震ふまえ議論⇒地震の長期評価 早期公表を決定 地震本部
⇒海域活断層の活動評価 “2024年度中に順次公表”
⇒「活断層」リスク評価 “調査手法など見直す必要ある” 専門家
飯田耕太 伊藤奨 上原聡太 内山裕幾 及川緑 老久保勇太 小林佑輔 阪本周悠 高柳撤也 谷川浩太朗 津村浩司 徳田隼一 野本宗一郎 林慶太 藤崎彩智 宮原豪一 若林勇希
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